回路図を読む!

回路図が読めるようになると、電子回路設計が面白くなります。

 「電子回路」というと「難しそう」「敷居が高い」「自分には無理そう」などと考えている人がいるかもしれません。しかし、最近では全く電子回路を知らない初心者でも、電子回路の勉強を始めやすい環境が整ってきております。

 特にマイコンを使った電子回路では初心者でも使えるキッドも多数出ており、難しいはんだ付けをしなくても始めることが可能です。マイコンのソフトも例文が作られており、またソフトの書き込みもUSB接続で簡単に書き込めるようになりました。

 しかしながら、「回路図を読む」ことや「回路図を作成する」などは、既に理解したうえで記載されているように思います。部品単体の説明では書いてなかったのに回路図になると「なぜここにこの部品があるの?」とか、思ったことはありませんか?

 私がいつも新しく入ってきた新入社員や未経験者に教えていた方法をここで紹介して行きたいと思います。

 ここではマイコンを使用した電子回路を前提として、各部品の動作を記載していきます。「それだけじゃない」とかあると思いますが、最低限ことだけ覚えて頂きたいためこの方法にしました。

抵抗

 電流・電圧を調整するまたは安定させる部品です。
 大きな用途は下記の3点です。

電流制限用抵抗

 図のように抵抗を接続することによって流せる電流を調整できます。
トランジスタのベース(入力)やLED(発光ダイオード)の電流調整用に使用します。
 
 ※LEDと抵抗の順番が入れ替わってもいいのか?と質問されたことがあります。詳細設計を行うと上でFMEA(Failure Mode and Effect Analysis)を行いますが故障した場合、最悪な状態とならないよう回路を考えるとこの回路になります。FMEAのお話はまた何処かで!

電圧制限用抵抗

 抵抗の分圧回路を使用し抵抗の比率によって抵抗間の電圧を調整できます。
FETのゲート(入力)の動作電圧の作成やコンパレータの基準電圧作成などに使用します。

入力電圧安定用抵抗(プルアップ抵抗、プルダウン抵抗)  

 トランジスタやFET、ICやマイコンなど入力端子に対して「浮いている状態」にしておくとノイズなどによって意図しない動作をしてしまいます。この「浮いている状態」を無くすために電圧レベルを確定する目的で使用します。

 プルアップまたはプルダウンを決めるのは、動作をしない方に接続します。例えば、HIレベルの電圧で動作をするのであればプルダウン抵抗を使用します。

コンデンサ

 電気(電荷)を蓄積して平滑する部品です。

 基板上の信号ラインや電源ラインにはキャパシタンスやインダクタンス、レジスタンス成分(LCR)が存在します。
 これらの影響によって負荷の電流が大きく変動すると電圧変動が大きくなり回路の動作が不安定になります。

 極端な場合は電源電圧の変動がそのまま信号ラインに重畳して誤動作を発生する場合もあります。
 
 容量の小さなコンデンサは小さい変動を吸収し、アルミ電解コンデンサのような大きな容量を持つものは大きな変動を平滑にします。大きな容量を持つコンデンサは調整池(電池)のような役割を果たします。

 回路図上では、アルミ電解コンデンサは電源回路の前後に配置されています。積層セラミックコンデンサなどは回路上でノイズが発生するような箇所または、外からもらう信号の入り口付近に配置します。

トランジスタ

 ベース(入力)の電流の調整によって、エミッタ・コレクタ間(出力)の電流を調整する部品です。 電子回路では必ずと言っていいほどトランジスタは使用されています。
 主な機能は「信号増幅」と「スイッチング」の2つに分かれます。マイコンを使った電子回路ではスイッチング用として使用されることが多いです。ここでは「スイッチング」での使い方を説明します。
 
 初心者の方が覚えるための基本的な動作説明になります。トランジスタの場合、ベースに流す電流の方向はエミッタにある記号の矢印の方向に電流を流せば良いです。

  • ベースに電流を流すと、コレクタからエミッタに電流を流す。
  • ベースの電流を止ると、コレクタからエミッタに流れた電流が止まる。

また、各端子に接続される電源や部品などは図のとおりです。

NPN型トランジスタ
PNP型トランジスタ

FET(電界効果トランジスタ)

 ゲート(入力)の電圧のオン/オフによって、ドレイン・ソース間(出力)をオン/オフさせる部品です。
 製作方法と構造での主な種類としては接合型FET(ジャンクションFET, JFET)とMOSFETに大別されます。

トランジスタの各端子に対応させると
 「ゲート」 :「ベース」に対応する端子
 「ドレイン」:「コレクタ」に対応する端子
 「ソース」 :「エミッタ」に対応する端子
となります。

よって、トランジスタの時と同様な記載をすると、

  • ゲートに電圧を掛けると、ドレインからソースに電流を流す。
  • ゲートへの電圧を止ると、ドレインからソースに流れた電流は止まる。

Pchは上記の逆になります。

 上記の図のように、基本となるNPNトランジスタとNchのMOSFETを覚えれば簡単に覚えることができるでしょう!

IC(集積回路)

 小さな基板に小さなトランジスタやダイオードなどを組みこんだ電子回路の素子です。ICが記載されている回路図を読むのはとても簡単で、知りたい部品の型番を調べてデータシートを検索し、そのデータシートにはどの端子にどのような機能が割り当てられているか記載されています。

 ICと呼ばれるものは用途によりいろいろあり無数にあります。今回はマイコンを搭載している基板に使用しているウォッチドッグタイマー付き電源ICのデータシートのについて記載します。

 高い電圧を低い電圧に降圧し、低電圧で連続して電流を流すことの出来るICです。代表的な製品は3端子レギュレータという製品があります。このICはこれにマイコンの暴走を検知(マイコンからの信号が途絶える)するとマイコンにリセットを掛ける機能を搭載したICとなります。入力と出力には、負荷変動による発信防止用コンデンサを接続するだけで安定した回路を構成できます。

データシートには下記の内容が記載されています。

ROHM製 LDOレギュレータデータシート抜粋

 「端子配置図」にピン番号が振られており、そのピンに対する機能が「端子説明」に記載知れています。機能に欄を見て頂くと、「入力」・「出力」などが記載されています。

 このままのピン配列で回路図に記載すると配線の引き回しが複雑化するので下図のように配置を変えて見やすくします。回路図の書き方の基本は「左から右」「上から下」に信号が流れるように記載します。

端子配列を変えた回路図

 実際に回路図を読むときには、このように入出力の方向を書き込むと分かりやすくなります。
  

マイコンを使用した簡単な回路図


 入力スイッチの条件によって、マイコン制御でLEDを点灯・点滅する回路を作ってみました。

 図を見て頂くと、入力・出力ともに同じ回路構成でできることが確認できます。マイコンの入出力として使用するトランジスタ回路はほとんどがこの形となります。他には入力ICを使ったり、出力はIPDや出力用のICを使用します。
 
 最初のころは回路図に動作させたときの信号の方向を記載すると理解しやすいと思いますので、今回は回路図に記載しました。
  

簡単な回路図の読み方のまとめ

  • 抵抗は、電流・電圧を調整する、または安定させる部品です。
  • コンデンサは電気(電荷)を蓄積して平滑する部品です。
  • トランジスタの主な機能は「信号増幅」と「スイッチング」。電流で制御を行う。
  • FETは電圧で制御を行う。
  • ICは、小さなトランジスタやダイオードなどを組みこんだ電子回路の素子です。データシートを見ると機能が割り当てられているか記載されています。