半導体ってなに?

 導体と絶縁体の中間の特性を持つ物質で、電流の流れはその物質の持っている抵抗値で決まります。

半導体とは

物質に電源を接続して電流を流すと、一般的に以下の3つに区別することができます。

  1. 導体・・・電流がよく流れる。
  2. 半導体・・・1.3.の中間。
  3. 絶縁体・・・ほとんど流れない。

2.のような特性を持つ物質を「半導体」と呼びます。 
ただし、「導体」や「半導体」との境界は、決まった区分けはありません。
導体、半導体、絶縁体の抵抗値による分類は以下の表のとおりとなります。

  物質 抵抗値[Ω]
導体 銅・アルミなど 10-6以下
半導体 シリコン・ゲルマニウムなど 10~105
絶縁体 ゴムなど 108以上

 

半導体の基本的な材料

 物質に電流が流れるのは、「自由電子」が流れているということです。この「自由電子」は、原子を構成する電子が軌道から外れることで発生します。
軌道から外れた電子は、物質内を自由に飛び回ることができることの様子から「自由電子」と呼ばるようになりました。
 例えば、シリコンSiの原子モデルでその様子を見ると下図のようになります。

シリコンSiの原子モデルの自由電子

 一番外側の軌道を回る電子のことを「最外殻電子」または「価電子」といいます。価電子の数で原子を区別する言い方を、「〇〇族」または「xx価原子」といいます。例えば、シリコンSiは最外殼電子が4個ですから「4族」または「4価原子」の仲間です。

自由電子:
 「原子核」と「電子」は、互いに引き合う力で結びついています。では、この結びつきを壊し、軌道からどのようにして電子を外すのか?というと例えば、外部から強い光を当てる「光エネルギー」や熱を加える「熱エネルギー」など外部からのエネルギーによって外すことが可能です。

 

 一番外側の軌道を回る4つの電子は、原子核との距離が離れています。そのため結びつこうとする力が一番弱く、この4つの電子は内側2つの軌道にある電子より飛び出しやすい状態になっています。つまり、この4つは外からの力が加わると、いずれかの電子が飛び出します。

 こうして飛び出した電子のことを特別に「自由電子」と呼びます。物質内を自由に飛び回ることのできる電子です。また、電子が原子核と離れるためのエネルギーの大きさは、それぞれの原子固有のものですあるので一定ではありません。

 電子の抜けた場所には、正の電荷⊕を持った孔ができたと考えます。これを「正孔」または「ホール」と呼びます。ホールは他の自由電子を取り込もうと待っていますので、自由電子の持つ負の電荷⊖と引き合うように,正の電荷⊕を持っていると考えます。

 一般に半導体を構成する基本的な原子は、ケイ素(Si:シリコン)または、ゲルマニウム(Ge)です。この2つの原子は、最外殻電子(価電子)の数が4つと共通しており、この2つの原子は「4価原子」といいます。 

 半導体を学ぶ上では、価電子と原子核だけが表現できればいいので、シリコンSiや,ゲルマニウムGeの原子モデルは、この先簡易原子モデルとして図(1)、(2)のように表します。シリコンSiで作られた半導体とゲルマニウムGeで作られた半導体とでは、電流の流れ方などに若干違いがありますが、基本的な働きは同じです。

4価原子の簡易原子モデル

ホールの流れとキャリア

 ホールは、価電子が技けてできたもので正の電荷⊕を持った孔でした。半導体を学ぶ上で、このホールも「移動する粒子」と考えていきます。下図は価電子とホールを描いています。

電子とホールの流れ。電子とホールは逆に流れる。

 図を見ると、ホールに隣の価電子が自由電子となって人り込んで行き上から順に5回繰り返しています。電子は右へ移動していますが、ホールは左へ移動しているように見えます。このことから、ホールも「移動する粒子」ということで取り扱います。

 このように、半導体で電流を流す「もと」となっているのは「自由電子」と「ホール」で、この二つは「電流を流す担い手(運び屋)」として「キャリア」と呼びます。

真性半導体(i型半導体)

 シリコンSiのみ(純度99.99999999≒100%)で構成された半導体を「真性半導体」と呼びます。下図はこの半導体の一部を見た図です。

 隣り合ったシリコンSi原子の価電子を1個ずつ貸し合い結びついています。これを「共有結合」といい強力な結晶状態で結びついています。あたかも一つのシリコンSi原子が、8個の価電子(最外殼電子)を持っているようになっています。

共有結合

 真性半導体は、電流がどのように流れるのかを考えると、今この「真性半導体」に外部からエネルギーを加えると、どこかの価電子が外部エネルギーによって軌道から外れます。よって「自由電子」と「ホール」が発生します。

 このホールは、近くの価電子を取り込みます。取られたところにはまたホー
ルができて近くの価電子を取り込みます。このように同じことを繰り返して、
電子が動くため電流は流れます。その様子を下図に示します。

真性半導体の電流の流れ

 真性半導体は、非常に安定した半導体なのでわずかな電流しか流れません。なので電流を流しやすいように、真性半導体の安定状態を少し崩した半導体を作ります。

p型半導体

 p形半導体は、4価原子であるシリコンSi結晶の真性半導体中に、ごく微量な
「3価原子」を混ぜて作られています。例えば、その数はシリコンSi原子14万個
に対して、1つの3価原子というような割合いです。

 下図は、3価原子として「ホウ素(B)」を混人した図です。また、真性半導体である4価原子以外の原子を特に「不純物」と呼びます。
 最初からホールが存在する状態となっています。

 3価原子を混入したために、共有結合が出来ない部分があります。(図中の点線の〇部分)。この部分には,「ホール」が最初から存在している状態になっています。3価の不純物は、半導体にホールを与えます。

 ホールは自由電子をもらおうとしているので、この場合の3価の不純物(ホウ素)は.「アクセプタ」と呼ばれます。アクセプタとは「もらう」ことを意味しています。

 p形半導体に外部からエネルギーを与えると、ホウ素B原子近くにある「ホール」が、他の電子を取り込みます。この時、取り込まれた価電子のあった所には、もちろんホールが出来てそこにも同様なことが起こりこれを繰り返します。

 このように、p形半導体において電流を流す主役は「ホール」になります。ホールは正電荷を持っていて、正は「陽」を表し、「陽」は英語で「positive」です。よってp形半導体の「p」はpositiveの頭文字です。

n型半導体

 n形半導体は、4価原子であるシリコンSi結晶の真性半導体中に、ごく微量な
「5価原子」を混ぜて作られています。例えば、その数はシリコンSi原子14万個
に対して、1つの5価原子というような割合いです。

 下図は、5価原子として「アンチモン(Sb)」を混人した図です。 最初から過剰電子がある状態となっています。

 5価原子を混人したため、共有結合ができない価電子があります(図中の点線の○部分)。過剰電子は、不安定な電子なので執道から外れやすくなっています。

 アンチモンのように過剩電子を自由電子として与える5価の原子を「ドナー」といいます。ドナーとは「提供する」ことを意味します。このn形半導体に外部からエネルギーを与えると、過剰電子が自由電子となって電流を流します。

 このように、n形半導体において電流を流す主役は「自由電子」になります。
自由電電子は負電荷を持っていて、負は「陰」を表し、陰は英語で「negative」です。n形半導体の「n」はnegativeの頭文字です。

多数キャリアと少数キャリア

 キャリアとは、電流を流す役目を持った「運び屋」のことで、p形半導体は「ホール」、n形半導体は「自由電子」です。

 p形半導体が電流を流す役目を持っていたのは、はじめから存在する多数「ホール」のためで、自由電子(価電子ではない)が、少数しかありません。

 一方、n形半導体では過剰電子が自由電子となっているため、自由電子はキャリアとして多数存在しホールは、少数しかありません。 

多数キャリア少数キャリア
p型半導体ホール自由電子
n型半導体自由電子ホール