水晶振動子

水晶振動子とは

 水晶の圧電効果を利用して、高い周波数で高精度の発振を起こします。水晶振動子も抵抗やコンデンサと同様受動素子です。
 水晶に機械的に圧力をかけると、表面に電気が発生する(圧電効果)と水晶に電圧をかけると、機械的にひずみを発生(逆圧電効果)します。水晶振動子は、この原理を応用しています。

水晶振動子 JIS記号
英語Crystal oscillator(Xtal)
記号X
単位Hz(ヘルツ)

水晶振動子の形状・構造・特徴

 一般的な水晶振動子であるAT振動子は圧電体である水晶振動子片を2枚の電極で挟んだ水晶振動体を保持器に収めたものである。水晶振動子は自由振動を起こすため、波形は正弦波となる。 

水晶振動子の形状・構造

水晶振動子の特徴

  • 2端子である。
     100kHz以下では内部で4電極のものもある。

  • 受動素子である。
     水晶振動子は自身で発振する能力がなく外部からの力で「発信させられる部品」であるので、抵抗やコンデンサと同様受動素子です。

  • 線形素子である。
     ダイオードのようにな非線形部分を積極的に使用するようなことはなく、安定した線形の範囲で使用します。

  • Qが非常に高い。
     水晶振動子のQで低いものでも数万、高いものは数百万もあります。よって、皆さんご存知の通り、急激な環境の変化があっても現状を維持しようとする力が強いため安定した周波数を出します。
     一方、発振を早い周期でオン・オフさせるような場合は十分な発振安定時間が取れず追従が遅れることがあります。

  • インピーダンスが変化する
     水晶振動子のインピーダンスは直列共振点は比較的低く、10MHzでは10Ω程度であるが、10.02MHzでは測定不可能な入インピーダンスとなるので急激に変化します。

  • 実際に機械的に振動している。
     圧電素子であるため実際に機械振動をしています。このため、振動子の周辺は空洞である必要があります。

  • 細部の特性が設計や製造方法により特性が異なる。
     同じ周波数でも・製造方法や設計により細部の特性が変わりますので、実際に接続して問題ないかマッチングを確認する必要があります。

人工水晶とカットアングル(ATカット)

 水晶振動子の材料は不純物の多い天然水晶をそのまま使用するのではなく、一度天然水晶を溶解し、高温・高圧下で時間をかけて結晶を成長させた高純度の人工水晶を使用します。
 この出来上がった人工水晶をZ軸から35°15′の角度で切り出した振動子ATカット水晶振動子と呼んでいます。

 現在市場に流通している水晶振動子の大半は、MHz(メガヘルツ)帯のATカットの水晶振動子です。加工し易さ、周波数安定性の良さ (温度特性・経年変化など)、発振のし易さに影響する等価直列抵抗値が小さいことなどから、非常に広く使用されており、音叉型の水晶振動子以外は大半がATカットの水晶振動子で、主にメインクロックとして使用されます。

 また、厚みが周波数を決定する重要な要素であるということです。厚みが1mmのときの発振周波数は1.67MHzになります。この値を周波数定数と呼び、発振周波数f0は次の式で表すことができます。

 \(\Large{f_{0}=1.67×\frac{n}{t}[MHz]}\)

n:オーバトーン次数(1,3,5,7…の奇数)
t:厚み[mm]

 この式から分かるように,発振周波数は厚みに反比例します。例えば,発振周波数が20MHzの基本波(n=1)であれば厚みは約83µm,50MHzの基本波であれば厚みは約33µmとなります。高い周波数にするには厚みを薄くする必要があります。

水晶振動子の使用上の注意

振動・衝撃

 部品運搬、基板実装時や落とした場合等過度な機械的振動を加えると、水晶片の割れや欠けなどが生じ、十分に動作しなくなることがります。

洗浄

 水晶振動子の周波数帯は、超音波洗浄機の洗浄周波数に近いこともあり共振破壊されやすいですので、超音波洗浄は極力避けてください。