コンデンサとは
英語では「キャパシタ」と呼ばれ「容量」が語源となっているそうです。コンデンサも抵抗器と同様、最も基本的な部品です。電子回路の1枚の基板に数十個~数百個使われています。
電気を蓄えたり、蓄えた電気を放電するのがコンデンサの役割です。この充放電を利用してフィルター回路を作成したり、ノイズ除去を行ったりします。コンデンサも抵抗器と同様の無ければ回路が成立しないと言っても過言ではありません。
表面実装部品(チップ部品)を多く使用されていますが、容量が大きいものなどは、リード挿入品の採用もあります。
回路図記号
英語 | Capacitor |
記号 | C |
単位 | F(ファラッド) |
コンデンサの形状・構造・種類・用途
一般的にコンデンサは、下図のように間隔をあけて対面させた2枚の電極に誘電体を挟んだものが基本構造となっています。
コンデンサの基本構造
コンデンサの静電容量
$$C=\frac{ε・S}{d}=\frac{ε_0・ε_r・S}{d}$$
S:電極面積[m]
d:電極間距離[m]
ε :誘電体の誘電率[F/m]
ε0:真空の誘電率
(8.855×10-12[F/m])
εr:誘電体の比誘電率
2枚の電極に直流電圧(V)を加えると、瞬間的に片方の電極に電子が集まってマイナスに帯電し、もう片方の電極は電子が不足状態になってプラスに帯電します。この状態は直流電圧を取り去っても維持されます。このことは2枚の電極の間に電荷が蓄えられたことになります。
コンデンサが蓄える電荷
$$Q=C・V$$
Q:電荷[C]
C:静電容量[F]
V:電圧[V]
電極間の誘電体は誘電体の誘電分極による作用で、蓄えられる電荷を増加させます。また、電極の面積を大きくしたり、電極間を狭くしても電荷は増加します。コンデンサがどれだけの電荷を蓄えられるかを表す指標のことを静電容量といいます。
コンデンサの充放電について
コンデンサは誘電体と構造などにより、大量の電荷を蓄えることができます。
電源から直流電圧を加えると、瞬間的に電流が流れてコンデンサを充電します。電極間の電位差が電源の電圧と等しくなると、電流は流れなくなり充電は終了します。
充放電過程は左のグラフのようになります。
カップリングコンデンサ、バイパスコンデンサ、デカップリングコンデンサ
ICを利用した電子回路では、カップリングコンデンサ、バイパスコンデンサ、デカップリングコンデンサなどと呼ばれるコンデンサが多用されています。
難しい用語に聞こえますが、基本は直流を遮断して周波数の高い交流ほど流しやすいというコンデンサの基本機能を利用したものです。
呼び名 | 内容 | 場所 |
カップリング コンデンサ |
直流成分をカットして交流成分を通過させるために入れるコンデンサ。 | トランジスタのベース |
バイパス コンデンサ |
ノイズなどの交流成分をGNDへ流すためのコンデンサ。 | ICの電源-GND間 |
デカップリング コンデンサ |
交流成分をカットして直流成分を通過させるために入れるコンデンサ。 | 電源-GND間 |
無極性コンデンサ
コンデンサの端子に印加する電圧の極性が規制されず、どちらの端子がプラスであっても使用可能なコンデンサです。無極性コンデンサであれば、ゼロ電位から上下する電圧の印加も可能です。
セラミックコンデンサは、電極間の誘電体にセラミックを用いたコンデンサです。
主な特徴は、
・高周波特性が良い(低ESR)
・高耐熱
・長寿命
です。
元々は単板型のコンデンサ(高耐圧、低用量)のリード付きが主流でしたが、積層構造にすることにより、小型・大容量化が可能になりました。この構造のコンデンサを積層セラミックコンデンサと呼んでいます。
温度変化に弱い製品でしたが誘電体(セラミック)の添加物を変えることにより低用量ですが温度補償用も出現しています。
リード付きでも積層セラミックコンデンサを使用したものが開発され容量が大きいものも登場しています。
フィルムコンデンサは、誘電体にプラスチックフィルムを用いたコンデンサです。内部電極の形成法の違いにより「箔電極型」と「蒸着電極型(金属化フィルム型)」に大別され、構造の違いにより「巻回型」と「積層型」、「誘導型」・「無誘導型」に分けられます。
主な特徴は、
・高周波特性が良い(低ESR)
・温度特性が良い(容量の変化率が小さい)
・静電容量の高精度対応可能
・長寿命
です。
セラミックコンデンサと比較すると耐熱性は低いが、優れた温度特性・静電容量の高精度対応可能である。形状が大きく高価という短所があるため、セラミックコンデンサではカバーできない、電圧・容量域や高性能/高精度用途で使用されます。
フィルムコンデンサの誘電体として、以下のようなプラスチックフィルムが使われます。
項目 | PET ポリエチレンテレフタレート |
PP ポリプロピレン |
PPS ポリフェニレンサルファイド |
PEN ポリエチレンナフタレート |
価格 | ◎ | 〇 | × | △ |
小型化 | ◎ | △ | 〇 | ◎ |
耐熱性 | 〇 | △ | ◎ | ◎ |
耐湿性 | △ | ◎ | 〇 | △ |
tanδ(ESR) | 〇 | ◎ | ◎ | 〇 |
用途 | ・リード付き ・一般的 |
・リード付き ・高周波・大電流 |
・表面実装型 ・フロー・リフロー ・低電圧 |
・表面実装型 ・リフロー ・中電圧 |
◎:優、〇:良、△:可、×:悪い |
PETとPPはリード線タイプの誘電体であり、以前は小形で低価格のPETが一般的に使用され、PPが優れた高周波特性(低ESR)の高周波/大電流用という棲み分けでしたが、PPは高安全・高耐湿性という特徴があり、小型化技術も進んでいるため、現在はPPが多く使用されています。
PPSとPENは高耐熱の特長から表面実装用フィルムコンデンサに使用されています。
有極性コンデンサ
2つの端子のどちらをプラス側とするか決まっています。これを間違えて使用するとコンデンサが故障・破裂します。そのため、直流電圧またはプラス側でのみ変動する電圧で使用しなければならりません。 しかし、有極性コンデンサのほうが小形・大容量のコンデンサを得やすいというメリットがあるため広く使われています。
アルミ電解コンデンサは、陽極(+)のアルミ箔の表面に誘電体となるアルミ酸化皮膜を形成させ、電解質「陰極(-)」に電解液(溶媒に電解質を溶かした液体)を用いた構造です。
アルミ電解コンデンサは大容量であることが特長です。アルミ箔の表面をエッチング等により凹凸を形成することで、電極の表面積(電極面積)を大きくしています。さらに酸化皮膜の厚み(電極間距離)をÅ(オングストローム※)レベルの超極薄で形成することで大容量化を実現しています。しかし、セラミックコンデンサやフィルムコンデンサと比較し、等価直列抵抗(ESR)が高くなります。長さの単位で 非常に小さな長さを表すのに用いられる。 1Åは10−10m = 0.1ナノメートル(nm) = 100ピコメートル(pm) と定義されている。
アルミ電解コンデンサは有限寿命品です。これは、電解液が温度により気化して封口ゴムから徐々に透過していくため、時間とともに容量が低下、ESRが上昇し、最終的にはオープン状態(電解液のドライアップ)の故障になります。
タンタル電解コンデンサは、陽極となるタンタル金属粉の焼結体の表面に誘電体となる五酸化タンタルを形成させ、電解質として二酸化マンガン(固体)を用いた構造です。
タンタル電解コンデンサはアルミ電解コンデンサよりも小型で周波数特性に優れ、寿命が長い(電解質が固体)という特長があります。
しかし、故障モードがショートであり発火に至る危険性があるため、ヒューズを入れるなど安全対策が必要です。
コンデンサまとめ
各コンデンサの特徴をまとめると以下のようになります。
項目 | セラミック※ | フィルム | アルミ電解 | タンタル電解 |
高容量 | △ | × | ○ | ○ |
高電圧 | ○ | ◎ | ○ | △ |
寿命 | ◎ | ◎ | △ | ○ |
温度特性 | △ | ◎ | △ | ○ |
低ESR | ◎ | ◎ | × | △ |
極性 | 無 | 無 | 有 | 有 |
その他 | DC常時バイアスによる容量変化大 | 高精度、価格が安い | 価格が高い、小形状が無い | 故障時に短絡するため発火 しやすい |
用途 | ・カップリング用 ・デカップリング用 ・平滑用 |
・電源ノイズ吸収用 ・放電回路用 ・共振用 ・力率改善用 |
・電源ノイズ吸収用 ・平滑用 ・デカップリング用 |
・カップリング用 ・デカップリング用 |
◎:優、○:良、△:可、×:悪い ※セラミックは高誘電率系積層セラミックコンデンサの特性。 |
コンデンサの使用上の注意
セラミックコンデンサ
- 定格電圧:
定格電圧以上の電圧が加わると、誘電体の絶縁破壊が報じて静電容量が変化し、最終的には電気的にショート状態となります。定格電圧以上にならないように部品の選定が必要です。
- DCバイアス特性:
印加する直流電圧により静電容量が大きく変化します。印加電圧が大きくなると、静電容量が下がります。これをDCバイアス特性と呼んでいます。特に、高誘電率系コンデンサ全般に見られる現象です。部品によって特性が違いますので、各メーカーのデータシートで確認して設計することが必要です。
- 音鳴き:
誘電体に電圧が加わると誘電体が変形する(歪む)という特性があります。このため、可聴域の周波数(20Hz~20kHz)を持った電圧が加わるとセラミックコンデンサ自身が振動し、基板にその振動が伝達、増幅されて音鳴きが発生します。音鳴きの大きさは誘電体材料だけでなく、コンデンサの形状や基板の大きさ、実装状態にもよります。
- クラック(ひび割れ):
チップの積層セラミックコンデンサ(表面実装部品)は、温度・機械的衝撃によりクラックが発生しやすい部品です。基板に実装されていると、熱による基板の歪や、部品実装時の衝撃や基板分割時の応力など基板の反りが発生し両端のランドの移動により電極に張力が働きクラックが発生します。
基板設計時には、セラミックコンデンサの配置や分割で力が加わる箇所の確認をして配置することが必要です。
フィルムコンデンサ
- 定格電圧:
「直流電圧」と「交流電圧せん頭値」の和が定格電圧を超えないようにしてください。定格温度(定格電圧使用最高温度)以上で使用する場合は、規定の軽減率で定格電圧を軽減(ディレーティング)してください。
- うなり音:
コンデンサの端子間に交流電圧が印加される場合、クーロン力の作用によって誘電体フィルムの機械的振動が生じてうなり音を発生する場合があります。
- 自己温度上昇:
リプル電流による温度上昇、交流電圧による温度上昇、高周波回路による温度上昇等により、コンデンサが自己発熱をします。この自己発熱が大きいと、劣化・損傷の危険がありますので各社のデータシートで何度まで温度上昇が可能かを確認してください。
アルミ電解コンデンサ
- 極性:
印加される逆電圧の程度(電圧の大きさ)によって状態が変わります。
■逆印加電圧が高い場合・・・大きな電流が流れ、この電流による損失で発熱が発生し、電解液が発熱によって電気分解を起こしてガスを発生させ圧力弁を作動させます。圧力弁が動作した時に蒸気が吹き出ますが、高温になっていますのでやけどの原因となります。また、コンデンサ自体も高温となっているますので同じように注意は必要です。
■逆印加電圧が低い場合・・・1[V]程度の逆電圧では、最初は電流が流れますが徐々に少なくなっていきます。
- 印加電圧:
定格電圧を超える電圧を印加すると、漏れ電流が急激に増加します。漏れ電流により発熱は発生し、これによって誘電体の耐電圧が低下ます。誘電体が絶縁破壊を起こすと、急激に大電流が流れ出して短い時間でケース内の圧力が上昇し、圧力弁が作動した状態となります。圧力弁が作動すると、開口した部分からガス化した電解液が放出されます。印加電圧が高いほど圧力弁の作動状態は激しく、電極間がショートすることもあります。
- リプル電流:
主に電源回路で 使用した時にIC への負荷電流が変動することにより、コンデンサに流れる電流のことを指します。アルミ電解コンデンサには印加できるリプル電流の限界値があります。その値はESR(等価直列抵抗)によって電力を消費する際に出る発熱によってコンデンサの容量を低下させます。これを防ぐための指標となっています。流れるリップル電流が大きな場合はそれなりに発熱が生じることを認識しておくことが重要です。
製品ごとに値が違うので、各メーカーのデータシートに記載を確認する必要があります。リプル周波数等で係数が変わってきますので確認が必要です。
実施の回路で負荷変動の周波数を測定するには、アルミ電解コンデンサがついていると思いますのでしれを取り外し、負荷に流れる電流をオシロスコープで測定すれば、脈動しているのが確認できると思います。
- 温度特性:
アルミニウム電解コンデンサの各特性には温度依存性があります。低温域において、電解液の抵抗増加により大幅な静電容量の減少、インピーダンス及び損失角の正接(tanδ)の増加があります。また、温度が高くなると漏れ電流は大きくなります。
- 寿命:
アルミ電解コンデンサの寿命は温度による依存が大きく、一般的には「10℃ 2倍則」とも呼ばれている「アレニウスの法則」によるとされています。これは、温度が10℃上がると加速係数は2倍になり、寿命は1/2になるという意味です。もちろん、その逆に10℃下げることができると寿命は2倍になるという意味でもあります。
例えば、「105℃/2000時間」という予測寿命のアルミ電解コンデンサを、75℃で使うことができれば16,000時間の寿命予測となりますが、95℃になれば4000時間の寿命を想定する必要があります。また、この予測寿命時間を見て、ICなどに比べるとはるかに短いことがわかると思います。
$$Lx=Lo×Bt^\frac{(T0-Tx)}{10} =Lo×2^\frac{(T0-Tx)}{10} $$
Lx:実使用時の推定寿命(hours)
Lo:カテゴリ上限温度において、定格電圧印加または定格リプル電流重畳時の規定寿命(hours)(各製品の耐久性規定時間。)
Bt :温度加速係数=2
To:製品のカテゴリ上限温度(℃)
Tx:実使用時の周囲温度(℃)
温度加速係数Btはコンデンサのカテゴリ上限温度以下(一般的に40℃〜カテゴリ上限温度To)では約2となるため、アレニウスの法則が成り立ちます。
寿命計算にリプル電流による発熱も考慮したい場合は、別途算出式がありますので、詳しくは各メーカーのホームページにある資料に記載している算出式を使用して算出してください。
<<アルミ電解コンデンサが劣化すると・・・>>
基本的には電解液の蒸発により静電容量が低下します。これを液漏れや容量抜けなどということもあります。
タンタルコンデンサ
- 極性:
有極性ですので逆電圧が掛からないようにする必要があります。構造上、逆電圧を掛けると陰極の「銀」が溶解して陽極の「タンタル」に析出してしまい、漏れ電流の増大による特性の劣化、後にはショートといった現象を引き起こします。ショート時は大電流が流れショートモードで破損し、この時発熱により発煙・発火します。逆電圧が掛かる可能性のある箇所で使用する場合は、ヒューズ等を採用した保護回路が必要です。「ヒューズ内蔵型タンタル電解コンデンサ」など対策した製品がありますのでそちらの採用も検討が必要です。また、テスタを使用する場合も極性と電圧を十分に確認する必要があります。
- 印加電圧:
使用電圧に対して十二分に余裕のある定格電圧の部品の選定が必要です。使用電圧の最大値(直流電圧+リプル電圧の和)は定格電圧を超えないようにする必要があります。印加電圧が大きくなると漏れ電流が増大し劣化および故障の原因となります。
故障を避けるには、各メーカー推奨の電圧軽減(使用電圧が定格電圧の〇〇%以下)を確認し使用してください。
- 電流について:
・リプル電流
リプル電流(高周波の電流)が流れることによりタンタルコンデンサ自身が発熱します。各メーカーのカタログや仕様書などの資料で規定された「許容電流値(実行電流値)」以内となるように設計する必要があります。また、温度と周波数によりリプル電流の許容値は変わりますので、必要に応じて算出する必要があります。
・突入電流・サージ電流
電源回路など低インピーダンスの回路での使用は注意が必要です。突入電流やサージ電流が間欠的に繰り返して流れるような回路では、この電流による発熱は3Ω/V以上の保護抵抗器を直列に接続が推奨されます。また、突入電流やサージ電圧の値がわかっている場合はそれらの値に耐えることの出来る製品の選定が必要です。 - 温度
定格温度範囲は広いものの、使用温度により静電容量やESR、漏れ電流等が変化しますので実際に使用する際は十分な検討が必要です。
コンデンサの定数の読み方と極性
積層セラミックチップコンデンサ以外は、部品の表面に「静電容量」・「定格電圧」
アルミ電解コンデンサ(リード部品)
リード付きのアルミ電解コンデンサは、定格電圧・静電容量はそのまま表記されています。有極性ですので、足の長い方が+側となります。
定格電圧:200[V]
静電容量:330[μF]
アルミ電解コンデンサ(チップ部品)
表面実装のチップ型アルミ電解コンデンサは図の箇所に記載されています。メーカーによって定格電圧の記載方法が違います。極性は台座の掛けている方が+側となります。
定格 電圧 |
6.3 | 10 | 16 | 25 | 35 |
表示 記号 |
j | A | C | E | V |
定格電圧:16[V]
静電容量:47[μF]
セラミックコンデンサ・フィルムコンデンサ
セラミックコンデンサ・フィルムコンデンサの場合、静電容量を3桁の数字で表します。単位はすべて[pF]です。
セラミックコンデンサ
第1、第2数字は有効数字で、第3数字は10のべき数です。
68×102[pF]=6800[pF]
定格電圧は下記の表のとおりです。
記号による定格電圧の表記 | |||||
記号 | 電圧 | 記号 | 電圧 | 記号 | 電圧 |
0J | 6.3V | 1D | 20V | 1H | 50V |
1A | 10V | 1E | 25V | 1J | 63V |
1C | 16V | 1V | 35V | 1K | 80V |
定格電圧:1K=80[V]
静電容量:6800[pF]
フィルムコンデンサ
セラミックコンデンサ同様、第1、第2数字は有効数字で、第3数字は10のべき数です。
22×105[pF]=2.2[μF]
定格電圧は表記のとおりです。
250[V]
定格電圧:250[V]
静電容量:2.2[μF]