抵抗器とは
最も基本的な部品で、電子回路には1枚の基板に数十個~数百個使われています。電流の流れを妨げたり、電圧を分けたりと電気を調整する部品となります。また、電圧のレベルを安定させる目的で使用する部品でもあります。抵抗器が無ければ回路が成立しないと言っても過言ではありません。
最近の電子回路は表面実装部品(チップ部品)を多く使用されていますが、W数が必要な部品などはリード挿入品の採用もまだまだあります。
回路図記号
英語 | Resister |
記号 | R |
単位 | Ω(オーム) |
抵抗器の形状・構造・種類・用途
炭素系
円筒の磁器(セラミック・アルミナなど)の表面に炭素被膜を形成して、らせん状に炭素被膜をトリミング(溝を作る)にて抵抗値を調整し端子を付けた後絶縁塗装を塗ったもの。
通常、小型の抵抗器というとこれを指す。誤差5%程度で雑音や周波数の特性は良くないが、価格が極めて安いため、一般的に幅広く使われている。
炭素粉末にシリカなどの絶縁粉末と樹脂を混ぜ、絶縁筒に注入したものにリード線を埋め込み、抵抗体表面を絶縁したもの。
特性は炭素皮膜に似ているが、雑音がやや大きい。構造上、寄生インダクタンスは低く高周波向けであり、また断線が起こりにくいという意味では信頼性はよい。
しかし樹脂を使用しているために温度係数が非常に大きく、また経年変化によっても抵抗値が大きく変化(増加)する。精密な抵抗値を求められる用途にはあまり使われない。
金属系
抵抗体としてNi・Cr (ニッケル・クロム)など安定した材料を使用。外観は炭素皮膜抵抗器に似ているが、特性は優れていて経年変化が小さく高精度(誤差1%程度)である。高周波特性も良く、温度変化に対しても安定してる。値段は炭素被膜の2倍程度高め。
精度がよく低い抵抗値も得られるため、通信・計測機器や微小信号を扱う回路などにも使用される。
抵抗体に酸化金属皮膜(酸化錫など)を用いており、小型で耐熱性に優れるため多くは数W程度の中電力用として用いられる。抵抗温度係数についても金属皮膜抵抗器に比べて値が小さいものを低コストで得られる。
主に電源回路等の中電力(1 – 5W程度)向けで使用される。
抵抗体に酸化ルテニウム等の金属酸化物とガラスを混合したもの。これをアルミナ基板などに高温で焼結させたものをメタルグレーズ抵抗器という。
厚膜を得ることができるため、サージやパルスに強く安定性、耐環境性に優れている。絶縁粒子を使用しているため、構造上高周波特性は良くない。
巻線
抵抗体に金属線(抵抗線)を用いて、磁器材料にらせん状に巻き付けたもの。耐パルス性や耐熱性に優れており、抵抗温度係数が小さく電流雑音が小さい。コイルと同じ巻線構造のため、高い抵抗値が得にくく高周波回路には不向きである。
主にラッシュ電流制限抵抗器として使用されまた、低抵抗値の製品は電流検出などにも使用される。
抵抗器本体(巻線抵抗器)をセラミック製のケースに収め、セメントにより封止したもの。大電力(2 – 20W程度)用途に用いられる。
特性は巻線抵抗器同じで、耐パルス性や耐熱性に優れているが高周波特性が悪い。
主に電源回路のラッシュ電流制限抵抗器として使用されまた、低抵抗値は電流検出などにも使用される。
巻線抵抗の一種で巻線抵抗体素子を放熱フィン付アルミケースの中に入れ、絶封止材料を用いてモールドをしている。アルミケースは放熱板となり大電力用に使用する。環境の変化(熱・湿度・耐圧・絶縁など)に優れている。
その他
端子線(リード線)を無くして、直接端子にはんだ付け、ボンディングまたはその両方が可能な処理が施されている抵抗器です。形状により角形と円筒形に分けられます。それぞれ抵抗体の材料により大きく分けると次の5種類があります。
このうち「コスト」・「小型化」・「実装作業性」の3つの観点を満足するメタルグレーズ皮膜タイプが大半を占めているそうです。
形状 | 抵抗体 |
角型 | ・メタルグレーズ皮膜タイプ ・金属皮膜タイプ ・金属板タイプ |
円筒形 | ・炭素皮膜タイプ ・金属皮膜タイプ |
厚膜の「メタルグレーズ皮膜」と薄膜の「金属皮膜」に大別でき、量的生産の中心は厚膜タイプです。厚膜タイプは装着性、耐環境性に優れた部品であり、薄膜タイプは抵抗値許容差・抵抗温度係数・電流雑音が小さいなどの特長がある。
特に抵抗温度係数については薄膜タイプが非常に小さく、抵抗値が安定しています。
メルフ(MELF)抵抗器の名称で呼ばれるチップ抵抗器です。リード付き抵抗器のリード線を取り除いて両端の電極を金属メッキのキャップを取り付けた構造となっています。
円筒形で金属キャップを使用しているため表裏がなく、電極強度・機械強度に優れています。
金属皮膜タイプは抵抗値精度・温度係数・電流雑音にハイレベルのものを得ることができます。
抵抗器の使用上の注意
定格電力(W)
定格電力とは、規定の周囲温度(定格周囲温度)において、連続動作状態で使用できる電力の最大値です。
上記のグラフは、抵抗器のデータシートに必ず記載されている内容です。グラフの通り、70℃以下の環境では100%まで問題ないように思えますが実際に使用する場合は、負荷軽減(ディレーティング)をもって使用します。抵抗器の場合は特に発熱する素子なので定格電力の40%以下で使用することが多いです。
定格電圧(V)
定格電圧とは定格周囲温度または端子温度において連続して印加できる直流電圧又は交流電圧の最大値です。
印加できる電圧は抵抗値によって異なり、定格電力と抵抗値から、以下の式によって算出来ます。
$$V=\sqrt{(P×R)}$$
(V:定格電圧[V]、P:定格電力[W]、R:公称抵抗値[Ω])
※ただし、最高使用電圧のいずれか小さい方とする。
「最高使用電圧のいずれか小さい方とする。」の内容を分かりやすくするため、グラフ用いて説明を行います。ここでは最高使用電圧を300[V]の場合とします。グラフを見て頂くと、抵抗値が支配する「定格電圧による領域」と抵抗値に支配されない「最高使用電圧による領域」が存在します。
「定格電圧による領域」は、使用する抵抗値によって印加可能な電圧を算出できます。消費電力の式 P[W]=V2[V]/R[Ω] が適応され抵抗値を大きくすると定格電圧も大きくできます。
一方「最高使用電圧による領域」について、本来抵抗値が大きくなれば定格電圧も大きくなるのですが、データシートで300[V]となっているとそれ以上印加することはできません。
よって、このグラフでは350[kΩ]で境界線となり、これより低い抵抗値では定格電圧の式が適用され、高い抵抗値の場合は300[V]が適用されます。
超えてはいけない電圧を超えた場合は次のようになると考えられます。
- 「定格電圧による領域」で使用電圧を超えた場合、発熱等による抵抗体の損傷が発生し、本来の抵抗値が得られないなど不具合の原因となることがある。
- 「最高使用電圧による領域」で使用電圧を超えた場合、形状や絶縁材料の特性により電極間でショートしたり、絶縁破壊が発生したりして回路的な故障の原因となる。
「定格電力」・「最高使用電圧」はデータシートに記載されています。下記に参考としてROHM株式会社チップ抵抗MCRシリーズのデーターシートを抜粋したものを張り付けておきます。
抵抗値と許容差
抵抗値の大きさは、1[Ω],2[Ω],3[Ω]と自由に選べるのではなく、ある法則に従った値を採用しています。通常はJIS C 5063の規格に基づいた、標準数列によって決められています。したがって、2.2[Ω]や4.3[Ω]と中途半端な数値となっています。
その標準数列は標準数「E系列」に従っており、E24系列が一般的に使用されています。系列の「E」はExponent(指数)のEで、次の数字24は分割数です。E24は、1から10までを等比級数(10の24乗根)で分割したものです。
なぜ、標準数「E系列」なのか?1[Ω],2[Ω],3[Ω]・・・と切りのいい数字の場合、部品は選びやすいが許容差が抵抗値によってまちまちになるため、販売側は多くとりそれ得ることになる。また、抵抗器の実際の設計では比や割合といった方法で使用することが多く整数よりも数列の方が使いやすいなどの理由があります。
下記の表は、E系列と抵抗値の許容差を表しています。炭素系の抵抗器はE24系列、金属系の抵抗器はE96の値を採用しています。
系列 | 抵抗値の 許容差 |
抵抗値 (例) |
E12 | ±10% | 1.0, 1.2, 1.5, 1.8, 2.2, 2.7, 3.3, ・・・ |
E24 | ±5% | 1.0, 1.1, 1.2, 1.3, 1.5, 1.6, 1.8, ・・・ |
E96 | ±1% | 1.00, 1.02, 1.05, 1.07, 1.10. ・・・・ |
抵抗値許容差の記号表記
抵抗値許容差に用いる記号は下記の表にあるように、データーシートや抵抗器の型番の中にアルファベットで表すことがあります。
シンボル | D | F | G | H | J | K | M |
許容差 | ±0.5% | ±1% | ±2% | ±3% | ±5% | ±10% | ±20 |
E系列 | E192 | E96 | E48 | E24 | E12 | E6 |
抵抗温度係数
すべての物質は温度変化によって抵抗値が変化します。抵抗器ももちろん使用周囲温度とともに変化します。その変化の割合をデータシートに抵抗温度係数等と表記されており、単位は[ppm/℃]です。例えば±400ppm/℃であれば、1℃あたり400ppm(0.04%)となり、100℃上昇すれば4%の変動があることになります。
抵抗器の使用温度範囲内で、規定の温度間における1℃ あたりの抵抗値の変化率をいい、次式で表されます。
$$抵抗温度特性(×10^{-6}/℃)=\frac{(R-R0)}{R0}×\frac{1}{(T-T0)×10^6}$$
R :T℃ における抵抗実測値(Ω)
R0:T0℃ における抵抗実測値(Ω)
T :試験温度の実測値(℃)
T0:基準温度の実測値(℃)
この温度変化による抵抗値の増減を利用したのがサーミスタです。マイコンのA/Dで測定しようとする場合は、一緒に使用する抵抗の温度係数に注意が必要です。
抵抗器の定数の読み方
カラーコード
固定抵抗器は外形の大きなものを除いてカラーコードとよばれる色帯で抵抗値を表記しています。カラーコードについては、IEC 62(国際規格)とJIS C 5062(日本工業規格)で表示方法が定められています。
一般的なものは色帯が4本で、左から第1数字、第2数字、乗数、許容差 (誤差) を表しています。許容差が1%になると有効数字が3桁となり第3数字が追加となり下図の通り色帯が5本となります。
安価で入手可能な炭素皮膜抵抗器(1/4W)は誤差が5% (金色) なので、金色の帯が右側になるようにして読み取ります。第1数字と第2数字からなる2桁の数に乗数を掛けたものが抵抗値になります。乗数は、10の累乗の指数部分の数字を表します。
例:「黄・紫・赤・金」の場合(色帯4本)
黄:4、紫:7、赤:2(×102)=100、金:5%
47×100[Ω]±5%=4700[Ω]±5%=4.7[kΩ]±5%
「黄・紫・黒・橙・茶」の場合(色帯5本)
黄:4、紫:7、黒:0、橙:3(×103)=1000、茶:1%
470×1000[Ω]±1%=470[kΩ]±1%
角型チップ抵抗の文字表記とサイズ読み
角型チップ抵抗器の抵抗値は3桁あるいは4桁の英数字で抵抗器の表面に表示しています。ただし小さなサイズのものには表示が無い場合もあります。チップ抵抗の場合は、許容差の表記はありませんが4桁表示の場合は許容差1%以下のものとなります。
第1、第2数字をE3(40%), E6(20%), E12(10%), E24(5%)の有効数字で、第3数字は10のべき数です。またRは小数点に読み替えます。LはmΩ単位の小数点に読み替えます。「( )内の数値は許容差」
例
473:47×103 =47[kΩ]
4R7:4.7[Ω]
4L7:4.7[mΩ]
第1、第2、第3数字をE96(1%), E192(0.5%)の有効数字とし、第4数字は10のべき数です。Rは小数点に読み替えます。LはmΩ単位の小数点に読み替えます。「( )内の数値は許容差」
例
4742:474×102 =47.4[kΩ]
R474:0.474[Ω]
47L4:47.4[mΩ]