工事担任者は、電気事業者の回線(電話回線など)を一般の個人や企業が利用するために必要な工事の実施または、監督するために必要な資格です。
では、資格の種別によって何ができるかをみてみましょう。
資格の種別と工事の範囲
工事担任者資格者証の種類は、AI種とDD種の2つに大きく区分されており、さらに各区分で第1種、第2種、第3種が設けられております。また、すべての工事の範囲を含むAI・DD総合種が設けられています。
資格の種類 | 工事担任者規則第4条 (資格者証の種類及び工事の範囲)の規定 |
工事が可能な 端末設備 |
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AI | 第1種 | アナログ伝送路設備(アナログ信号を入出力とする電気通信回線設備をいう。以下に同じ)に端末設備等を接続するための工事及び総合デジタル通信用設備に端末設備等を接続するための工事。 | 中~大型PBX、ボタン電話装置、ファクシミリ、ISDN端末設備、モデム等 |
第2種 | アナログ伝送路設備に端末設備等を接続するための工事(端末設備等に収容される電気通信回線の数が50以下であって内線の数が200以下のものに限る。)及び総合デジタル通信用設備に端末設備等を接続するための工事。(総合デジタル通信回線の数が毎秒64キロビット換算で50以下のものに限る。) | 小型PBX、ボタン電話装置、ファクシミリ、ISDN端末設備、モテム等 | |
第3種 | アナログ伝送路設備に端末設備を接続するための工事(端末設備に収容される電気通信回線の数が1のものに限る。)及び総合デジタル通信用設備に端末設備を接続するための工事。(総合デジタル通信回線の数が基本インタフェースで1のものに限る。) | 電話機、ホームテレホン、モデム、ISDN端末設備、自動検針メーター(ガス、水道、電力等)、ホームセキュリティシステム端末等 | |
DD | 第1種 | デジタル伝送路設備(デジタル信号を入出力とする電気通信回線設備をいう。以下同じ。)に端末設備等を接続するための工事。ただし、総合デジタル通信用設備に端末設備等を接続するための工事を除く。 | 中~大型IP-PBX、VoIPゲートウェイ、スイッチングハブ、ルータ、OA複合機、TV会議システム等 |
第2種 | デジタル伝送路設備に端末設備等を接続するための工事(接続点におけるデジタル信号の入出力速度が毎秒100メガビット(主としてインターネットに接続するための回線にあっては、毎秒1ギガビット)以下のものに限る。)。ただし、総合デジタル通信用設備に端末設備等を接続するための工事を除く。 | 小型IP-PBX、IPボタン電話装置、パソコン、プロードバンドルータ等 | |
第3種 | デジタル伝送路設備に端末設備等を接続するための工事(接続点におけるデジタル信号の入出力速度が毎秒1ギガビット以下であって、主としてインターネットに接続するための回線に係るものに限る。)。ただし、総合デジタル通信用設備に端末設備等を接続するための工事を除く。 | IP電話機、パソコン、プロードバンドルータ、ホームセキュリティシステム端末、映像受信端末等 | |
AI・DD総合種 | アナログ伝送路設備又はデジタル伝送路設備に端末設備等を接続するための工事。 | 以上のすべて。 |
工事担任者ができる工事例
前述の表や文字だけでは分かりにくいため、以下のように図を用いて説明していきます。
AI第3種の工事担任者ができる工事例
AI第3種の工事担任者は、回線設備としてアナログ電話1回線、ISDN基本インターフェイス1回線を取り扱うことができます。また、端末設備は、ISDN回線を用いたデータ伝送、電話機・ホームテレホン・FAX、ISDN端末等となります。
DD第3種の工事担任者ができる工事例
DD第3種の工事担任者は、回線設備としてDDX等の回線交換のデジタル回線、100Mbps以下のデジタル回線(主としてインターネット接続のための回線)・FTTH、ADSL等を取り扱うことができます。また端末設備は、IP電話機、ルータ、LAN、パケット端末、その他回線対応端末等となります。
※DDX:NTTが提供する、電話回線を利用したパケット通信サービスのこと。
AI第1・2種、DD第1・2種およびAI・DD総合種の工事担任者ができる工事例
DD第2種やAI第2種以上の工事担任者は、主に企業で使用する回線設備や端末設備となります。DD第2種以上はPBXを中心とした回線や端末の接続となります。
PBX「Private Branch Exchagne」(構内交換機)とは、大きな企業など組織で多数の電話機等を使用する際に、その施設内で設置・運用される電話交換機のこと。同一施設内に敷設された電話回線を一か所に集約し、内線番号を用いて電話機同士で発着信や通話ができるようにする。施設内の電話機から外線への発信や、外線から代表番号などへの着信を特定の電話機に転送することもできる。
IP-PBX「Intenet Protocol Private Branch Exchagne」とは、TCP/IPで接続された施内のLANを利用して、PCやIP電話機などを使って内線通話を行うのに必要な機器。外部の別のネットワークや公衆電話回線などとの中継・接続も行うことができる。
情報通信ネットワークの構築を行う業種の例
情報通信ネットワークの構築を行う企業が資格の取得を積極的に行っています。工事担任者が多数雇用されている企業は「安全で確実」な工事を行う会社として「信頼性」をアピールすることができます。
業種の例 | 構築事業の例 |
電気通信業 電気通信工事業 |
通信ネットワークの構築、通信サービスの提供、通信工事、ネットワーク工事 |
電気工事業 | 電気工事、通信工事、情報家電工事 |
情報通信機器製造・販売業 OA事務機器製造・販売業 |
機器の設置・保守、LAN関係 |
家電用機器製造・販売業 | 情報家電機器の設置、ネットワーク化 |
警備業 | 管理、防犯、防犯システムのネットワーク化 |